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SIMフリースマートフォンについてのいろいろなコト

NuANS NEO Continuum探訪

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はじめに

市場参入では先んじていながら、残念ながらモバイル市場で圧倒的にAppleとGoogleの後塵を拝してしまったMicrosoftが、Windows 10 Mobileで起死回生を図るための売りの1つがユニバーサルWindowsプラットフォーム (UWP) であり、その共通のUniversal Windows app frameworkにより、PC、タブレット、電話などのデバイスの違いを吸収するアプリが開発できることと言われてますが、Continuumはそれを最大限に生かすためのMicrosoftの提案であり、他のプラットホームにはない唯一のアドバンテージと言えます。しかしそもそもアプリが少ない中、Continuumで動くアプリはさらに限定される現状でもあります。


ContinuumはWindows 10 Mobileをデスクトップのようにも使えるという点で注目を集めていますが、そのハードウェア要件は高く、MSM8909/8916を採用した多数のWindows機(マウスやFREETELなど)では利用できません。NuANS NEOとVAIO Phone Bizは対応可能で、TrinityとVAIOの両方が自分たちがMicrosoftに働きかけたことによってギリギリにContinuum対応に含まれたとされるQualcomm製のミッドレンジ向けSOCであるMSM8952(Snapdragon 617)が採用されています。当初はMicrosoftはSOC性能の点でMSM8952はドロップしていたほどなので、Continuumの利用にはやや不安があります。

 

NuAND NEOはType-Cコネクタを搭載していますが、MSM8952(Snapdragon 617)はUSB3.0には非対応であり、どちらもディスプレイモニターとの接続方法が無線しか選択できない点が、最大の制限事項です。特にNuANS NEOは2GBのメモリ容量のため、1280x720のHD解像度に制限されており、4KやフルHDなどの大画面に出力した際には引き伸ばして表示されるため、元の表示解像度の低さが気になります。その点はVAIO Phone Bizは3GBのメモリを搭載しているため、1920x1080のフルHD解像度(実際の動作は未確認)になると思われます。

NuANS NEOでの実際のスクリーンショット(1280x720)

Continuumでスクリーンショットを撮るには「Print Scr」キーを使います。

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VAIO Phone Bizなどで実現できる1920x1080のスクリーンイメージ 

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NuANS NEO

現時点ではNuANS NEOのみが国内使用可能(技適所得済)なため、これで実際の動作を確認してみます。とりあえずNuANS NEOで下記のような構成で、Continuumを動作させてみると、あまりの実用性の低さにがっかりするかもしれません。このようにNuANS NEOでContinuumを使うためにはかなり試行錯誤が必要で、ここではその経緯を抜粋してご紹介します。

ディスプレイ

2.4Ghz対応の一般のMiracastドングルや最近のテレビに標準装備されているミラーリング機能を使います。

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SONY BRAVIAに装備されているスクリーンミラーリング機能 
キーボード

Bluetooth英字配列キーボード(Anker製)を本体にペアリングして使用します。

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ポインティングデバイス

NuANS NEO自身のLCDタッチパネルをそのまま使います。

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Continuum動作中は本体がタッチパッドとして使える


この構成ではカーソルの操作に画面表示が十分に追いつかず、キーボード操作も困難で、あまり実用性はありません。主原因はディスプレイの表示遅延ですが、キーボートとポインティングデバイスにも課題があります。マウスカーソルを速めに「くるくると」その場で回転させてみると、カーソル表示は一周遅れるほどの表示遅延があることがわかります。またこれはContinuum自身の問題ですが、LCDが常時ONで消灯できないため、電力消費が抑えられないという難点があります。

ディスプレイ性能を改善

NuANS NEOでは有線接続(Wired Connection)がサポートされていないため、無線接続(Wireless Connection)の中では最も定評があるActiontec製ScreenBeam Mini 2 Continuumを利用してみます。見かけは頼りない中華SOCを採用した普通のMiracastドングルに見えますが、最新のFW(ver 5.3.9.0以降)であれば、給電用のmicroUSBコネクタにYケーブルを接続することで、ここにUSBデバイスを接続することも可能で、Wireless Dongleだけでなく、Wireless Dockとして機能し、ここにマウスとキーボードを接続することができる意外と便利なものです。

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設定やファームウェアの更新にも専用のアプリが必要で、ストアからダウンロードする必要があります。

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これはWi-Fiダイレクトで接続しますが、2.4Ghzでの無線接続は他のデバイスとの干渉があります。Bluetoothも2.4Ghz帯であり電子レンジの干渉や他の多くの周辺のデバイスとの干渉があるため、5Ghzで接続するのが望ましいのですが、これを明示的に5Ghzを選択する方法が見つかりません。次の方法で、5Ghzでの接続と実際に接続されていることが確認できます。

1. NuANS NEO自身を5Ghzの無線ルーターに接続した後に、この状態でミラーリングを開始する。

2. Wifi Analyzer (Android版)などで、5Ghz接続を確認する。

Wifi Analyzerで5Ghzの信号をモニターすると、下の2つ山がMuANS NEOと無線ルーター、その上のDIRECT-EHWindowsGphonePQEQというのが、ScreenBeam Mini2で、すべて5Ghzで動作していることがわかります。

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これにより無事に5GhzでMiracast接続しており、達成可能な最大のパフォーマンスに到達できています。

キーボードとマウスを改善

マウスとキーボードは1個のUSBドングル(2.4Ghz無線)で両方を賄うタイプが望ましいです。Bluetoothは干渉による接続性(ペアリング)や操作性に問題が起きやすいため、これをNuANS NEOのOTG機能を使って本体に直結するのが安心です。

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ここでNuANS NEOはUSB2.0でありながら、無駄にType-Cコネクタを採用しているため、Type-C対応のOTGアダプターが必要です。数個購入して試したが、動かないものもあるのでご注意ください。AnkerやAukey製のものは大丈夫でした。

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試してみた複数のType-C OTGアダプタ

本体を充電しながらOTG対応しているアダプタが理想ですが、まだ見つけられていません。このためContinuum利用中にOTGを使うには、本体のバッテリーで駆動しなければならず、バッテリーの消費が避けられません。さらに悪いことに、NuANS NEOはOTG使用状態でバッテリーゲージが動かないバグがあるようで、OTG使用中のバッテリーの残量がわかず、突然に電源が落ちます。

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このYケーブルは動作せず(充電も不可)

実際にロジクールの製品を試してみましたが、特に不都合はありません。Microsoftキーボード配列のため、もちろんWindows 10との親和性があり、日本語・半角英数字の切り替えに迷わない点もお奨めです。英語キーボード配列は、切り替えがままならず、操作性に劣ります。

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Type-C型OTGアダプタ、ロジクールドングル、マウス&キーボード 

Bluetoothマウス

Bluetoothマウスは消費電力も大きいためにやや重く、あまりポピュラーではありませんが、USB OTG中は充電ができないため、代替案として検討中です。下の2品種を試してみましたが、特に不都合はありません。Windowsボタンが付いているので便利かもしれません。

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Wireless Dock化してみる

ScreenBeam Mini2にYケーブルを用意することで、USBホスト機能を有効にし、Wireless Dockとして使うことができます。USBポートに先ほどのロジクールのUSBドングルを装着すれば、マウスキーボードがMiracastのWi-Fi通信を経由して接続できます。これによりOTGポートが解放できるため、本体へ給電しながら利用できます。配線はこのように入り組みます。

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ScreenBeam2 Miniの専用ユーティリティーでUSBローカルアクセスモードがONになっていることを確認してください。ファームウェアが5.3.9.0より古い場合は、この専用ユーティリティーで最新に更新してください。

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Wireless Dockの操作感はほとんどOTG接続の場合と変わらず、今のところ支障はないようです。まだ試行錯誤は続ける予定ですが、今日はここまでです。

まとめ 

ここまでにかかった労力に対して、得られるのはスティックPC程度のエクスペリエンスであり、とても見合わない感じですが、こうした初物は楽しいものです。しかしマウスやキーボード、ScreenBeam2、各種ケーブル、電源類を持ち歩いてまで、ノートパソコンの代わりにスマホを使いたいとは思えません。当面は初物好きなマニア向け、いわゆるアーリーアダプタ向けでしょう。本命は今後出てくるであろう価格的にも同等レンジなMSM8953(Snapdragon 625)以降のSOC採用機からであり、ここでのUSB 3.0対応で有線接続(Wired Connection)が可能になるのがポイントです。それがMicrosoftの当初の構想だったのが、TrinityかVAIOのおかげで、無線オンリーのMSM8952で未成熟なままのお披露目になったようです。MSM8952はワンポイントリリーフのような位置付けのSOCとなるでしょう。(USB3.0非対応が中途半端) 

実用をお考えの方は、有線接続ができるタイプを待った方がよいでしょう。特に企業内などで多数の端末が同時にWi-Fi Miracastで安定的に動作するとは思えません。

今回試したデバイス類

LOGICOOL ワイヤレスコンボ mk240 ブラック MK240BK

LOGICOOL ワイヤレスコンボ mk240 ブラック MK240BK

 

 

Actiontec ScreenBeam Mini2 Continuum SBWD60MS01JP

Actiontec ScreenBeam Mini2 Continuum SBWD60MS01JP